転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


425 偉い貴族様が泊まるとこはね、中に何個もお部屋があるんだって



「なるほど。部屋の奥に金属製の棚を作って、その上段を氷の魔石で冷やすのじゃな」

「うん。そしたら、そこで氷が作れるでしょ? でね、その棚の下んとこを網にしとけば、そこからつべたい風が出て、お部屋全体が冷蔵庫みたいになると思うんだ」

 僕とロルフさんはね、このお部屋を冷蔵庫にするにはどうしたらいいのかってお話をしたんだ。

 それでね、その横ではお話で出てきた必要なものをそろえるために、ローランドさんが羊皮紙にメモを取ってくれてたんだよね。

「ふむ。じゃがな、ルディーン君。その方法だと、部屋の奥と手前では温度がかなり変わるのではないかな?」

「そうだけど、もしお部屋全体の上んとこを氷の魔石で冷やしちゃうと、多分全部が氷ができるくらいつべたいお部屋になっちゃうんじゃないかって、僕、思うんだ」

 同じような作り方の簡易魔道冷蔵庫はね、木で作ってあるから上からつべたい風が下りてきても中が全部おんなじようにつ下手くなる事は無いんだ。

 でもこのお部屋は地面の下にあるから、お外の温度の影響をほとんど受けないでしょ?

 だから氷の魔石で冷やした分だけ、全部のお部屋がつべたくなっちゃうんじゃないかなぁ。

「旦那様、一つよろしいでしょうか?」

 そんな風に僕たちがお話をしてるとね、メモを取ってたローランドさんがロルフさんに声を掛けたんだ。

「何か気が付いた事でもあったか?」

「はい。先ほどの方法ではこの部屋の場所によって温度が変わるのではないかとの事ですが、そのような作りの方がかえって都合がよいのではないでしょうか?」

「都合がよいとな?」

「はい。これは別宅を訪れた際にノートンから聞いた話なのですが、ルディーン様が作られた簡易魔道冷蔵庫は今までの魔道冷蔵庫に比べて、食材の管理がしやすいそうなのです」

 ノートンさんって言うのはね、僕がジャンプの魔法で飛んでくロルフさんちの料理長さんなんだ。

 ローランドさんがそのノートンさんから聞いた話によると、お野菜や果物ってものによって長持ちする温度が違うんだって。

 でも今まで使ってた魔道冷蔵庫は、中が全部おんなじくらい冷えちゃうからあんまり冷やしたくないお野菜なんかは厚めの皮袋とかに入れるとかの工夫をしてたそうなんだよね。

 でも僕が作った簡易魔道冷蔵庫は氷を作ってるとこが一番つべたくって、そこから離れるほどあったかくなるでしょ?

 だからノートンさんはおっきな簡易魔道冷蔵庫を作ってもらって、今はそれでお野菜の管理をしてるんだってさ。

「なるほど。ここのように倉庫全体を冷蔵庫として使うのであれば、場所によって温度が違う方が使い勝手が良いというのじゃな」

「その通りでございます」

 ローランドさんはね、ノートンさんだったら他にも何か気付くことがあるだろうから、もしここを冷蔵庫にするんだったらその前に一度見てもらったら? って言うんだ。

 だって後からあそこをこうしといたらよかったのになぁって思っても、使い始めちゃった後だと治すのが大変だからねって。

「うむ。確かにそうじゃな。ルディーン君もそれでいいじゃろうか?」

「うん! ノートンさんが見てくれた方が、絶対すっごいもんが作れるはずだもんね」

 と言う訳で、今はこれは絶対にいるなぁって物だけローランドさんに書いてもらっといて、後はまた今度って事になったんだ。


 さて、これで下の階は全部見てまわったよね?

 だから次は二階を見てまわる事になったんだけど、その前にバーリマンさんがどんな風になってるかを教えてくれたんだ。

「二階はね、その殆どが客室で構成されているのよ」

「お客さんのお部屋?」

「ええ。一応主人である準男爵の自室としての部屋やお客さんがカードなどを楽しむ遊戯室、それに食堂などもあるけれど、大部分はお客さん用の部屋ね」

 ここって貴族様のお家だったでしょ?

 貴族様ってパーティーってのを開くために遠くから来たお客さん呼ぶことがあるから、そう言う人たち泊まれるお部屋をいっぱい用意するのが普通なんだって。

「特にこの館は隣に商会を立てるはずでしたでしょ? だから普通の貴族が構える館よりも客室が多いみたいなのよ」

「そっか。じゃあ、おんなじお部屋がいっぱいならんでるんだね」

 僕はバーリマンさんのお話を聞いて、じゃああんまり見るとこ無いのかなぁって思いながら階段を上がったんだ。

 でもね、2階に上がってすぐのお部屋の中を見て、僕はびっくりしたんだ。

「わぁ! すっごい家具がいっぱい。それにお屋根の付いてるベッドまであるよ」

「ここは準男爵の自室のつもりで整えられた部屋ですもの。家具もそれなりのものが並んでいるわ」

 一階は殆どのお部屋が空っぽだったでしょ?

 だから僕、二階も同じようにお部屋だけがあるんだろうなぁって思ってたんだ。

 でもお仕事用のと違ってこう言うとこに使う立派な家具とかは作るのにすっごく時間がかかるから、ずっと前から注文してお家ができたらすぐに入れてもらうんだって。

「ほれ、下の階でも応接間やダンスホールの家具は立派なものが入っておると言っておったじゃろう? それと同じで、このような部屋の家具はきちんと整えられておるはずじゃ」

「じゃあさ、二階は他のお部屋もみんな、こんな風に家具が入ってるの?」

「ええ、そうよ。見に行く?」

「うん!」

 最初に入ったお部屋の横はベランダのあるちょっとした広間になっててね、仲のいいお友達が来た時なんかは下にあるダンスホールじゃなくってここでちっちゃなパーティーを開くそうなんだ。

 でね、その次にはちょっとした会議ができる食堂があって、そこから先がバーリマンさんが言ってたお客さんのお部屋だ。

「わぁ、おっきなお部屋だね」

「あら、この区画にあるのは友人用の客室だから、これでも小さい方なのよ」

 僕ね、お客さんが泊まるお部屋がいっぱいあるって言ってたもんだから、ちっちゃなお部屋が並んでるんだろうなぁって思ったんだ。

 でも見に行ってみたら、思ってたのよりずっとおっきかったもんだからびっくりしちゃった。 

 それなのにバーリマンさんは、このお部屋はちっちゃい方なんだよって。

「このお部屋でもちっちゃいの?」

「ええ。この館の入口近くにある来賓用の部屋は、ここの3倍くらいあるわよ」

 このお部屋はね、おっきいけど一部屋しかないんだよね。

 だけど一番おっきいとこは寝るだけのお部屋やみんなでお話するお部屋、それに顔を洗ったりするとこやおトイレまでついてるんだって。

「そんなお部屋があるの?」

「ええ。ただ日常的に使うつもりではなく、もし自分よりも位の高い貴族を招くことがあった場合への備えなのでしょうね」

 ここの持ち主だった貴族様は、おとなりに商会を作るつもりだったよね。

 貴族様がやってる商会って、僕たちみたいな平民よりも貴族様のお客さんの方が多いんだって。

 だから自分よりも偉い人が来ることもあるからって、別館なのにそんなすっごいお部屋を作ってるんだよってバーリマンさんは教えてくれたんだ。

「まぁルディーン君の場合は使う事も無いでしょうし、一度見るだけ見て、後はロルフさんの家から派遣されてくるメイドたちに管理させておけばいいと思うわよ」

「うん。僕は使わないから、それでいいよ」

 僕、別におトイレとかがお部屋に付いてなくてもいいもん。

 それにそんなお部屋をいっつも使ってたら、お掃除するのも大変でしょ?

 だから小っちゃい方のお部屋でいいやって思ったんだ。

 あっ! でも。

「ねぇ、キルヴィさん。お姉さんたちはそのお部屋の方がいい?」

 もしかしたらお姉さんたち、そんなすごいお部屋を使いたいなぁって思うかもしれないでしょ?

 だから僕、キルヴィさんにそのお部屋使う? って聞いてみたんだよね。

「えっ?」

 そしたら棒たちのお話を聞いてなかったのか、ぽかんって顔してるんだもん。

 だから僕、すっごいお部屋があるんだよって教えてあげて、もういっぺん使う? って聞いてみたんだ。

「お姉さんたち、ここに住むことになるでしょ? だからそのすっごいお部屋に住みたいかなぁって思って」

「むっ……」

「む?」

「無理無理無理無理無理無理無理無理!」

 そしたらさ、急に頭を横にぶんぶんと振って、おっきな声でこんなこと言い出したもんだから、僕、びっくりしちゃった。

「そっか。お部屋がいっぱいあると、お掃除するのも大変だもんね」

 でも、そう言えばあんまりすっごいお部屋だと大変だもんねって思った僕は、もういっぺん聞いてみたんだよ。

「じゃあ、どのお部屋がいい?」

「どっ、どの部屋って?」

「だから、ここにあるどこのお部屋を使うの? それ決めとかないと、ロルフさんちの人が来た時、困っちゃうでしょ?」

 ロルフさんちのメイドさんたちって、夜遅くまでお仕事してる人もいるでしょ?

 このお家に来る人の中にだってそう言う人、いるはずだもん。

 だったらお泊りするお部屋がいるから、そう言う人たちがどこを使っていいか解るようにお姉さんたちのお部屋は最初に決めといた方がいいと思うんだ。

「どの部屋って……私たちがこの辺りの部屋を使うって言うの!?」

「うん。だってベッドがあるお部屋、二階にしかないんだもん」

 一階にもお部屋がいっぱいあるけど、そこには何にも入ってなかったでしょ?

 だから寝ようと思ったら、ここに並んでるお部屋を使うしかないよね。

 そう思った僕は、そうだよってお返事したんだけど、

「「「むっ……」」」

「む?」

「「「無理無理無理無理無理無理無理無理!」」」

 そしたら今度は三人そろってそう言いながら、さっきのキリヴィさんみたいに頭を横に凄い勢いで振ったんだ。



 馬車にさえ怖くて乗れないって言うのに、貴族用の客室になんか住めるはずないですよねw

 さて、作中で簡易魔道冷蔵庫は氷を作る場所から離れるほど暖かくなるという描写があります。

 これを読んで、冷たい空気は暖かい空気に比べて重いから、それはおかしいのでは? と思った人もいるかもしれません。

 でもこの世界には扉を密閉するゴムパッキンも、冷蔵庫の中に冷気を閉じ込める機構や素材もありません。

 このような理由で氷の魔石で冷やしている場所に近いほど温度は低くなり、そこから離れるほど外気の影響を受けてどうしても温度が高くなってしまうと言う訳です。

 まぁそれでも中に銅板を張っているおかげで、一応冷蔵庫としての役割をこなす程度には中全体が冷えているのですけどね。


426へ

衝動のページへ戻る